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『 発想法 』を読んで ー アイディアが創られる時

2015年09月08日田中
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【こちらの記事は、約5分程でお読みいただけます。】

おはようございます。火曜日担当、新米デザイナーの田中です!

長らくお休みをいただいていましたが、学校の方も落ち着き活動を復帰させていただくことになりました!

今週は、以前にも少し紹介させていただいたKJ法の開発者である川喜田二郎氏の著書 『 発想法 』 についてです。

皆さんも、アイディアを生み出す時に苦労をなされた経験はありませんか?

今回の記事では、川喜田氏の実経験を参考にしながら誰もが体験する苦労と解決方法について読み解いていければと思います。

では、どうぞ!

はじめに

KJ法と聞いて、「 あぁ、あのKJ法ね 」と思われる方も多いと思います。しかし、発明者である川喜田二郎氏の名前や著書である 『 発想法 』 についてご存知の方はそう多くないかもしれません。

現在KJ法は色々な場所、特にビジネスにおいてよく耳にしますが、単にKJ法といってもかなり奥が深いようですし、KJ法は発想法( 川喜田氏によれば、アイディアを生み出す方法 )の中のわずか一部に過ぎないようです。

なので、今回はこの 『 発想法 』 についてしっかりとご紹介できればと思います。

本書を読み終えて

正直言えば、この 『 発想法 』 という本はかなり難かしく、未だに僕も理解しきれているとは言えません。本当に理解するためには、何度も何度も反芻しながら読み返す必要があるかもしれません。

ただ、著者の観察眼や先見性は凄まじく、初版から50年近く経っても未だ輝きを一切失わず、読めば読むほど発見のある名著であることは間違いないと思います。

著者の言葉によると、

この本には野外科学とKJ法の育った初心が盛り込まれており、現在の発達したそれらも、基本的にはこの本で訴えた道を歩いているのである。

<引用> 『発想法』 40版 まえがきii より 

とあり、KJ法について学ぶ気構えで本書を読もうとすると、この ” 野外科学 ” というワード、そして ” KJ法の初心 ” という成り立ちの背景が複雑に絡み合うことで、本書の理解が困難になるかと思われます。よって、発想法について知るという大きな心構えが本書を理解する第一歩かもしれませんね。

野外科学にはなぜ発想法が必要だったのか?

そもそも、川喜田二郎氏は文化人類学者であり研究者です。そして、さらに言えば ” 野外科学者  です。野外科学とは何とも初めて聞く様な単語ですが、著書の区分によれば科学は以下の三つに分ける事が出来るようです。

20150908_研究という名の仕事

< 引用 > 『 発想法 』 P22

書斎科学 過去の情報のストックにおおいに依存している。頭の中の推論に重きを置いている。

実験科学 実際に現実界のものに触れて、観察したことを重要な拠り所にする。

野外科学 実際の観察と経験を重要視する。野外において活動する。場所的一回性がある。

しかし、KJ法もとい発想法は、野外科学者である川喜田二郎氏が自身の必要上から実学的に作り出したとありますが、なぜ、野外科学には発想法が必要だったのでしょうか?

ここで、重要な一文がありますのでご紹介させていただきます。

これを発想法につながる文脈でいうなら、実験科学は仮説を検証するところに重要な性格があるのに対して、野外科学はむしろその仮説をどうして思いつけばよいのかという、仮説を発想させる方法と結びついているのである。

< 引用 > 『 発想法 』 P14 – P15

つまり、野外科学には何が自分のテーマになるのか、問題を提起させるために発想法が必要だったのです。

発想法の中のKJ法

そもそも、発想とは一体どういったものでしょうか?

序盤の方でも少し触れさせていただきましたが、本書より核心的な一文を引用させていただきます。

ここで扱う「 発想法 」すなわちアイディアを創りだす方法は、発想法一般ではなく、私の出した発想法に限られている。

< 引用 > 『 発想法 』 40版 まえがきi より 

すなわち、発想法とは著者が生み出したアイディアを作り出す方法と解釈しておいて問題なさそうです。そして、良く耳にするKJ法は、実はその発想法の中の一部に過ぎないようです。

というのも、その理由は本書の以下の一文より理解できます。

KJ法だけが単独で役立つのではなく、その前後に必要な他の方法がある。ことにKJ法を複数人でものごとの計画技法に応用した場合には、すでに述べたように、ブレーンストーミング、KJ法、パート法と三位一体でこの順番に使うのがよい。

< 引用 > 『 発想法 』 P157

以上により、アイディアを生み出すためには、この三つの法則をバランス良く使う必要があります。今回は、全てについて詳細を書いてしまうと長くなってしまうので簡略化してお伝えさせていただきます。

20150908_kj法

< 引用 > 『 発想法 』 P176

  1. ブレーンストーミングとは、集団でアイディアを出し合う方法で、これにより情報を溜めます。
  2. 次にKJ法により、情報を空間的に配置し、情報を構造化・新しいアイディアの創出を図ります。
  3. 最後はパート法によって手順化します。

発想法とは情報の獲得構造化及びさらなる発展手順化の三種の神器からなっており、野外科学者である川喜田氏の場合はフィールドワークにより、情報を獲得した後にチームでどのように構造化、手順化するのかという必要性から発想法を考えるに至ったと思われます。

この発想法というメソッド野外科学者( 文化人類学社 )である川喜田氏の背景を、丁寧に読み解いてゆけば少し難解に思えてしまう本書も非常に納得できる、論理的な構成になっています。

おわりに

今回は、『 発想法 』についてご紹介させていただきましたが、なぜKJ法という一つのツールが、川喜田氏の野外科学から飛び出し、現代のビジネスの場で見かけるようになったのでしょうか?

その根拠を本書から発見できましたので、以下で一文を引用し、締めとさせていただきたいと思います。

個人がデータを組み立てるのと、チームが、さまざまの個人の能力を組み立てるのとは、水準が違うだけで、事柄の性質においてはおなじではないか。そこで発想法につながるべきデータの統合化の方法は、複数の人間の協力の技術にそのまま通じているのである。

< 引用 > 『 発想法 』 P56 – P57

ありがとうございました。

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